選択ツール で複雑な選択を作るときにはどうしても限界が見えてしまいます。 そんな時、 クイックマスクならば作業はずっと楽にできます。 簡単に言うとクイックマスクとは、 選択の輪郭をなぞるのではなく選択範囲を塗るやり方を提供するしくみです。
GIMPで選択をとると、 普通はその輪郭をなぞっていく「蟻の行進」のような点滅破線で表示されます。 しかし実際は点滅破線だけでは表現しきれない多くのものが選択にはあります。 GIMPにおける選択とは、 0 (非選択) から 255 (完全選択) までの値をもつ画素 (ピクセル) で画面全体を覆う、 まさに一人前のグレースケールチャンネルといえます。 点滅破線はその半選択 (128) 画素の上を通るようにひかれています。 つまり、 内側と外側の境目であるかのように見えている点滅破線は、 現実には連続体の断面にすぎないのです。
GIMPにおいてクイックマスクとは、 選択範囲を構造的に余すところなく表現するためのものです。 しかもこれを実効させると、 新たなる計り知れないほど強力になった方法で選択を手懐けられます。 クイックマスクを起動するには、 画像ウィンドウの左下にある赤枠印をクリックします。 このボタンは切り替え式で、 もう一度クリックすればもとの点滅破線のモードに戻ります。 そのほかにメニューで Shift+Q も使えます。
→ としてもクイックマスクになりますし、 ショートカットクイックマスクを有効にすると、 選択は画像を覆う透明な膜のように見えます。 この透明度はそれぞれの画素ごとの選択の度合いを表しています。 初期設定ではマスクは赤く染まっていますが、 色は変えられますので作業しやすい色が他にあれば変更しましょう。 画素の選択が弱まるにつれマスクがどんどん曇ってゆきます。 完全選択の画素は快晴です。
クイックマスクモードでの作業は画像そのものではなく選択チャンネルに作用します。 特に描画ツールはその典型です。 白で塗ればその画素は選択されます。 黒く塗った画素は選択されません。 描画ツールはどれでも使えます。 塗りつぶしツールやブレンドツールも同様です。 卓越したGIMP使いの人は、 選択を丁寧に扱うには「選択を描画」することこそ簡単で効果的であると心得ています。
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クイックマスクで作った選択を新しいチャンネルで保存する方法 : 選択が生きている状態で、 クイックマスクは無効にしておきます。 メニューから 選択マスク コピー」 と名付けられた新しいチャンネルができているはずです。 (このコマンドを繰り返すと 「... コピー#1」、 「... コピー#2」 の順に増えてゆきます。) → とすればチャンネルダイアログに 「 |
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クイックマスクが有効なときは、 切り取って貼り付ける操作は画像そのものではなく選択に作用します。 この操作はある画像から他の画像への選択範囲の移送を最も簡単にこなす技として使えます。 |