3.11. 修復ブラシ

図 13.75. ツールボックス上の「修復ブラシ」ツールアイコン

ツールボックス上の修復ブラシツールアイコン

このツールについては以前、 「修復ブラシツールはまるでステロイド注入でスマートになったクローンツールみたいだ」と書かれたことがあります。 確かに「修復ブラシツール」は「スタンプで描画」ツールと近い間柄ですが、 画像の小さな瑕疵を除去するのにはこちらの方がきびきびとこなします。 写真に写った皺をとりのぞくのはお手のものです。 その違いは、 参照元から修復箇所への単純な画素 (ピクセル) 転写ではなく、 修復箇所の周辺の画素情報までも考慮した転写にあります。 この技術は Todor Georgiev 氏の数学論文 [GEORGIEV01] に示された数式を利用しています。

使用するにあたっては、 まず瑕の大きさに合わせてブラシを選びます。 次に Ctrl+第1ボタン で再生の元となる領域をクリックします。 Ctrl キーを放して瑕の場所までドラッグしてゆきます。 再度クリックします。 もし瑕が浅く周囲からあまり際だったものでなかったならば、 これで直ちに修復が済みます。すぐできなくてもクリックを繰り返せば直りますが、 塗り過ぎに注意しましょう。

3.11.1. 呼び出し方

遠近スタンプで描画」ツールを起用する方法はつぎのいずれかです。

  • 画像ウィンドウのメニューより ツール描画ツール修復ブラシ

  • ツールボックスのツールアイコン

  • キーボードショートカット H

3.11.2. キー修飾 (初期設定)

Ctrl

このキーは参照元を指定するのに使います。 修復にはどの画像のどんなレイヤーからでも、 活性化させてから (レイヤーダイアログで分かります)、 Ctrl キーを押しながら画像ウィンドウ上でクリックすれば利用できます。 もし位置合わせをツールオプション上で なし揃える に指定した場合にはクリックした位置が修復転写の参照原点となります。 その位置の画像データが修復ツールの塗りはじめに充てられます。 このキーで参照元を指定する間、 カーソルはトンボ十字の姿に変わります。

Shift

参照元が決まったら、 このキーを押せば直前にクリックした位置と現在のポインタの位置との間を結ぶ細い線が現れます。 Shift キーを押しながら再びクリックするとその線上に沿って 「修復」が行われます。

3.11.3. オプション

図 13.76. 「修復ブラシ」ツールのツールオプション

修復ブラシツールのツールオプション

一般的にはこのツールを起用すると、 そのツールオプションがツールボックスの下に繋げられたウィンドウ上に現れます。 そのようなウィンドウが見あたらないときは、 画像ウィンドウのメニューより ウィンドウドッキング可能なダイアログツールオプション と辿れば今使っているツールのツールオプションウィンドウが開きます。

モード; 不透明度; ブラシ; 拡大・縮小; ブラシ感度の調整; フェードアウト; 揺らぎ; ハードエッジ
[注意] 注意

ブラシツールの全般もしくは大多数に共通するツールオプションについての説明は ブラシツールのあらまし をご覧ください。

レイヤー結合色

このオプションを有効にすると、 参照元レイヤーに限らずその画像の全ての可視レイヤーに基づいて修復が行われます。

位置合わせ

このオプションは スタンプで描画ツール で説明してあります。

3.11.4. 修復と転写の相違点

修復ブラシツールには「スタンプで描画」ツールと共通した機能がありますが、 実行結果はまるで違います。

図 13.77. 「修復」と「転写」の比較

修復と転写の比較

赤の区画に2つの黒丸。 ズーム800倍。 参照位置は4色の出あうところ。 転写によるものが左の黒丸。 修復によるものは右の黒丸。