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開発者は怠けものです.ファイルの追加,削除,または名前の変更のたびに, Makefile.amの更新を忘れないようにする必要がないよう, Makefile.amでワイルドカードを使用したいときもよくあります.
これにはいくつかの欠点があります.
cvs add
やcvs
rm
を実行する必要があることを,とにかく覚えておく必要があります.とい
うわけで,Makefile.amも反射的にすぐ行なうようになります.
逆に,アプリケーションが完全ではない場合,Makefile.amにファイル
を追加する必要があるので,それをcvs add
することを覚えておく手助
けになります.
make dist
で文句を言わ
れます.さらに,リストアップしている以上のファイルを配布することもあり
ません.
それらすべてを却下するほとワイルドカードに十分な価値があるという反対意 見があるかもしれませんが,まだ哲学的な欠点もあります.Automakeにワイル ドカードを伝えるためのパッチを書き始める前に,主な技術的な問題を見てい きましょう.それは移植性です.
$(wildcard ...)
はGNU makeで動作しますが,他の
makeの実装では移植性がありません.
Automakeで$(wildcard ...)をサポートする唯一の方法は,
automakeの実行時に$(wildcard ...)を展開することで
す.結果として得られるMakefile.inには,$(wildcard ...)
が
使用されておらず,すべてのファイルをリストアップしているので移植性があ
ります.しかしそれは,ファイルを追加,削除,または名前の変更をするたび
に,開発者がautomake
を実行する必要があるということを意味します.
Makefile.amを編集するより,実際は若干勝っています.確かに,
emacs Makefile.am; make
と入力するよりautomake; make
と入
力する方が簡単で速いでしょう.しかし,この構文のサポートを追加するのに
十分なパッチを書くことを邪魔する人はいません.Makefile.amや個別
のMakefileの断片にファイルリストを生成するスクリプトを使う人も
います.
移植性に気を付けていなくても,GNU Makeだけをターゲットにしていて,なん
とかして$(wildcard ...)
を使用したい場合でも,処理されるファイル
をAutomakeが正確に知っている必要がある場所がたくさんあることを知ってお
くべきです.Automakeは$(wildcard ...)
を展開する方法を知らないの
で,これらの場所で使用することは不可能です.$(wildcard ...)
は,
Automakeが尊重するAC_SUBST
されている変数と比べてブラックボック
スになります.
-Wportability
フラグを使用すると,$(wildcard ...)
の構成物
は警告されるはずです.